看護師は他の職業に比べて転職率が高く、実に約6割の人が、1回以上勤務先を退職しています。(看護職員就業状況等実態調査結果より)
慢性的に人材不足な病院や施設が多く、「国家資格」という資格の優位性から、看護師は日本全国どこでも働くことができ、求人も多数あります。
そのため、看護師さんは転職しやすい(退職しやすい)職業であると言えるのですが、いざ「退職したい!」と思っても、なかなか円満に退職できないケースが多いのをご存知でしょうか?
長期間・短期間に関わらず、その病院で看護師として経験を積ませてもらい、お給料を貰ってきたことは事実。それまで一生懸命に働いてきたのに、辞める時に関係をこじらせてしまうと後味も悪く、スッキリしないものですよね。
どうせなら揉めることなく職場を辞めたい!という方も多いと思いますので、今回は上手に円満退職する方法を紹介していこうと思います。
退職まで余裕のある計画をたてる
民法では、退職届を提出してから退職するまでに、最低限必要な期間は、2週間とされています。会社側はそれ以上の期間、社員を拘束する事は出来ませんので、2週間経てば、雇用契約は切れます。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。
民法627条1項より
しかし、看護師は患者さんの命に関わる仕事です。急に人員が減ることで現場が混乱し、看護の質が下がるようなことがあってはなりません。
引き継ぎの期間やシフト変更などを考えると、最低でも1カ月前には、退職が決まっている状態が望ましいと言えます。
そのため、退職したい日から逆算し、退職届を提出する時期や、所属長に相談を始める時期など、自分の思った通りには行かないことを想定した上で、余裕ある計画を立てることが重要です。
就業規則の確認する
計画を立てる上で重要になってくるのが、施設の就業規則です。
ほとんどの施設では、入職の際に就業規則を配布すると思いますが、その中に、退職についての規則も明記されているので、事前に手続きや手順をしっかり確認しておきましょう。(退職願・退職届を提出しなければならない時期や、提出先なども決まっていることが多いです。)
中には、退職の1年前には「退職の意思があることを文書にして所属長に提出しなければならない」というケースもあるそうです。
さすがに1年も先の予定を決めろといわれても難しい話ですが、円満退職したい場合には、就業規則に従うのが一番ですので、施設側としっかり調整するために、確認しておくと良いでしょう。
また、一部の民間病院や規模の小さい施設の場合は、就業規則自体が存在しなかったり、配布されない場合もあるので、施設長や人事部に確認しておく必要があります。
その時点で退職の意思があることは相手に伝わってしまいますが、「規則やルールに則って退職をしたい」という考えがあることは伝わると思います。
転職先と相談する
退職の理由が転職である場合、働きながら就職活動を行うため、現在の勤務先へ辞める意思を伝える前に、転職先が決まってしまうことがあります。
このような場合、転職先の施設に、「まだ退職日が決定していない」ということを、事前に伝えておいたほうが良いかもしれません。
転職先はあなたを戦力の一人として計算していますので、「いつから働いてほしい」という希望があるはずです。
しかし、希望通りの時期に辞められるとは限りませんので、いつから働けるか明確でないと、転職先も困ります。
実際、看護師さんの中には「退職を引き止められたから、内定が取り消しになっちゃった」という方もいるそうです。
せっかく一生懸命就職活動をして、条件に合う施設を探して採用していただいたのに、そんな苦労も台無しになってしまう場合もあるのです。
そこで、転職先との面接の際には、「まだ退職日が決まっていない」ということを、明確に伝えておくことが必要です。そのうえで、「いつ就業してほしいのか」という転職先の希望と、「最長いつまで待ってもらえるのか」という期限をはっきり聞いておけば、自ずと計画も立てやすくなります。
転職先から「まったく待てない」「すぐにでも働いてほしい」という返答があり、相談の余地がない場合は、縁がなかったと諦めるか、円満退職を諦めるか、ご自分で選択しなければなりません。
所属長と相談する
退職する意思が固まったら、まず所属長に相談しましょう。一般病棟では、看護師長がそれに当たります。
先に他のスタッフや看護部長などに退職の意思を伝えてしまうと、看護師長の面目が潰れ、所属長の監督不行き届き、指導不足となってしまうこともあります。
看護師長と2人で話をするのは緊張しますし、なかには怖い人もいて怒られるのが嫌だ、という方もいると思いますが、これを乗り切らないと先へは進めません。
まずは看護師長に相談し、自分の意思を伝えると同時に、相手の都合や希望をしっかり聞いておきましょう。
また、看護師長と話をする前に、準備をしておくことも必要です。
いざ2人になったら緊張して、言いたかったことが言えないと、円満とは程遠い結果となってしまい、結果もこじれてしまうかもしれません。
「退職を考えている」という意思。「なぜ退職したいのか」という理由。「いつ退職したいのか」という希望を、明確に伝えられるよう、紙に書き出して整理しておくと良いでしょう。
退職したい理由については、本来勤務先に伝える義務はありません。
しかし、ただ「退職します」と言うだけでは、相手も「はい、わかりました」とは答えられないと思います。
かなりの確率で「なぜ?」と聞かれるので、そこで「お伝えする義務はありません」と答える自信のない方は、しっかりとした理由を、伝えられるようにしておく必要があります。
引き止められたらどうすればいいの?
では、もし引き止められてしまったらどうすればよいのでしょうか。
相手が「仕方ない」と思えない退職理由の場合、想像以上の強い引き止めに合う可能性があります。
例えば、「腰痛が辛い」「体調が悪い」など身体上の問題だと、「しばらく休職して」「夜勤をなくすから」「負担の少ない科に配置換えするから」と、言われてしまう事もあるでしょう。
「いじめを受けている」などの人間関係の理由でも、配置換えの提案をされる場合があります。「忙しいから」「給与が少ない」などの理由では、相手の反感を買い、看護師としての資質まで問われる場合も。
相手が「仕方ない」と思うような理由でない場合、実際の退職理由とは別に、引き止められない理由を用意するのも、1つの手かもしれません。
強い意志を持って、相手と向き合っていないと、ずるずる働き続ける羽目になることもあるので、注意が必要です。
円満に退職しやすい理由とは?
「夫の転勤による遠方への転居」など、今後の通勤が不可能であることや、「家族の病気などで実家に帰らなければならない」などの家庭の事情、「今の施設にはない科で働きたい」というスキルアップの希望など、相手方の引き止めにくい理由があると、スムーズに進められるはずです。
中には「国際ボランティアに行きたい」という理由で退職した方もいるようで、こもまでくれば、相手も引き止めようがありません。
人間関係が悪いため退職・転職したい場合でも、「この病院にない科で働きたいから」「スキルアップのため転職したい」などの理由を伝えると、引き下がってもらえる可能性があります。
先輩看護師の中には、完全に嘘の理由を作って退職した、などという人もいますが、そこまでしないと、場合によっては円満に退職するのが難しいのです。
また、体調不良が原因の場合は、医師の診断書などを添えるだけでも説得力も増すでしょう。「休職では病院に迷惑をかけて気が休まらないので退職したい」と伝えれば、相手も諦めてくれるかもしれません。
「せめて新人が育つまで辞めないで」「○月の繁忙期までいてほしい」「人事異動で補充されるまでいてほしい」など、OKが出ても退職時期には注文がつくこともあるので、できれば最初に計画を立てる際に、ここまで見越して時期を考えておくと良いでしょう。
相手方の都合も考慮しながら、自分の都合とすり合わせて、うまく収まるように調整すると、退職も良い方向に向かうと思います。
まとめ
看護師が円満に退職するためには、就業規則を確認しながら余裕を持った計画を立て、施設や所属長に相談し、各方面に配慮しながら調節する事が必要です。
時には引き止めに合い、思い通りにならない事もあるかと思いますが、そんな時は強い意志を持って、相手と向き合ってみてください。
自分のことを考えるだけではうまく行きませんので、辞めたあとの状況も考えて、なるべく皆が納得できる形で退職しましょう。