あなたは患者さんや職場の仲間と、しっかり信頼関係を築けているでしょうか?
人間関係を築く上で何よりも大切なのは、信頼関係です。
信頼があるから同じ仲間として一緒に仕事が出来ますし、患者さんも自分の体を医師や看護師に預けられます。
もし、今あなたが上手く信頼を築けていないなら、少しのポイントを意識するだけで相手との関係性が変わってきますので、是非下記で紹介する方法をためしてみてください。
信頼関係を築く
相手と信頼関係を築くには、その人の世界観を理解し承認する。つまり、相手の考えを理解し、認めてあげることが大切です。
そのためには、①相手がどのようにものを見て、聞いて、感じているのか知る。②相手と世界観を共有し、認めてあげる。という2つのポイントを意思しておく必要があります。
以下に具体的な方法を紹介しますので、順を追ってご覧ください。
1.代表システムを合わせる
人間は、外から情報を得る時に、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感を使って信号を受け取っています。
代表システムとはこの五感の事で、上記のような情報入力の話だけではなく、情報の処理や出力までを含めたものが代表システムを構成する要素と言えます。
代表システムは、大きく視覚、聴覚、体感覚(嗅覚、味覚、触覚)に分けて考えることができます。相手の代表システムがわかると、その人がどの感覚を優先して使っているのかわかるので、相手を理解することにつながります。
相手の様子を観察することでどのタイプかだいたいわかりますので、患者さんや職場の仲間で苦手な人がいたら、観察してみてください。
視覚タイプ
視覚タイプの人は頭の回転が早く、イメージで何かを表現するのが得意です。目線はよく上に向く傾向があり、「〜のように見える」などイメージを描いて会話している場合が多いです。また、話が急に飛んだりするのも特徴です。
聴覚タイプ
聴覚タイプの人は論理的で、話の筋が通っていたり、言葉の使い方に厳格だったりします。目線は左右に動かす傾向があり、「〜のように聞こえる」など音に関して表現する場合が多いです。
柔軟性に乏しい傾向もあります。
体感覚タイプ
体感覚タイプの人は、感覚的で情緒的な傾向があり、話すテンポはゆっくりです。目線は比較的下を向くようで、「〜のように感じる」など感覚でものを表現する場合が多いです。
感情に取り込まれやすいという面もあります。
自分の苦手な人がどのタイプかわかったら、少しずつでいいので相手に合わせてみてください。※具体的方法は後述します。
自分と違う代表システムを使うと、初めは違和感があって変な感じがすると思いますが、相手のリアクションはよくなると思います。
ポイントとしては、人間は基本的に全ての感覚を使っているで、場面や状況によって優位な代表システムが変化する場合があります。そんな時は、相手をよく見て今どのタイプになっているのか観察してみてください。
相手の言葉を伝え返す
コミュニケーションを取る時によく起こる問題として、会話の中で「この人は私の話をわかっていない」と相手が感じてしまう事があります。自分の話をわかってもらってないと感じると、相手はさらに自分の意見を主張しようとしますし、あなたに対して「この人はわかってない人」という烙印を押されてしまう事になります。
もし、これが患者さんだったらあなたに対する信頼は失われてしまいますし、下手をするとクレームにつながる恐れもあります。
そこで、相手とうまくコミュニケーションを取るために、会話の中で相手が使った言葉を伝え返してあげてください。言葉を伝え返してあげると、「あ、この人はわかってくれているんだ」と相手が無意識的に感じてくれます。これはバックトラッキングという手法なのですが、相手に対して理解を伝えるだけでなく、自分自身が相手を理解することにも役立ちます。
伝え返し方としては、以下の3つの方法を状況に応じて使い分けると良いと思います。
キーワードを伝え返す
キーワードを伝え返す場合は、相手が会話の中で繰り返し使ってくる言葉や、そのときの感情を表す言葉、その人の価値観や信念に触れる言葉を伝え返すと良いと思います。
例)患者「親族に胃癌の人がいるので、私も癌ではないかと不安です。」
あなた「あなたは、自分が癌ではないかと不安なのですね」
内容を要約して伝え返す
話の内容を要約して伝え返してあげると、自分と相手が同じ世界観を共有することに役立ちます。同じ世界観を共有していると自然と信頼関係が築きやすいです。
相手の話が長い時にも、要約して伝え返す事は有効です。
例)患者「看護師さんにはいつも感謝しています。病気で辛い時に励ましてくれたので、病気に立ち向かう勇気を貰うことができました。おかげで、今は快方に向かっています」
あなた「看護師さんの励ましで、勇気をもらえたんですね」
語尾を伝え返す
語尾を合わせる方法としては、相手の会話の中で「〜だと感じる」とか、「〜だと見える」「〜だと聞こえる」などのワードが聞こえてきたら、こちらも同じように伝え返してあげると効果的です。
これは代表システムの所でも少し説明しましたが、これらのワードは相手が今どの感覚を使って話をしているのかがわかるポイントです。特に、語尾は代表システムの現れやすい所なので、伝え返して上げることで同じ世界観を共有すること繋がります。
上記の場合だと「〜だと感じているんだね」「〜だと見えているんだね」「〜だと聞こえているんだね」と伝え返してあげてください。
例)先輩看護師「◯◯先生はいつも怒っているように見えるよね」
あなた「確かにいつも怒っているように見えますね」
動作・姿勢を合わせる
人が打ち解けあっている、信頼関係が築けている時の特徴として、「相手と共感出来る」という事があります。みなさんも、同じ趣味や境遇の人とはなんとなく打ち解けやすかったり、仲間意識が高くなったりした経験があるのではないでしょうか。
人間には、ミラーニューロンという細胞があるのですが、これによって他人の行動を見ると、自分も同じ行動を取っているかのように反応できる事が知られています。これが「共感」につながるのですが、相手の動作や姿勢と合わせることで、同じく「共感」を生むことができます。
相手のリズムにあわせる
みなさんは、自分が落ち込んで悩んでいる時に、明るい話を凄く楽しそうに話されてちょっと嫌だなぁっと思った経験はないでしょうか。また、自分は凄い早口なのに、もの凄くゆっくり喋る相手にイライラした経験はないでしょうか。
これらは、自分の相手のリズムが違うことでミスコミュニケーションが起きている状態です。自分と相手が違うと共感や仲間意識は生まれづらいですし、むしろ「自分とは違う人」という認識に相手がなってしまいます。
そこで、上手くコミュニケーションを取る方法としては、相手の感情や気分、話のリズムに自分を合わせていくのがいいと思います。
相手が悲しんでいる時は自分も悲しんで、相手がゆっくり話す場合は自分もゆっくり話して上げるといいと思います。声の大きさやトーンを合わせるのも効果的です。
ただし、相手が自分に対して怒っている時に、感情や話のリズムを合わせてしまうと逆効果になる恐れがありますので、そういう時は相手の怒りを一旦受け取る事が大事です。
相手のリズムと合わせる方法は、会話をしなくても使えるので、いろんな場面に応用出来ると思います。(例:相手の呼吸や瞬きと合わせる)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
信頼関係というと、仕事の実績を積み、看護師として一人前になって周りから信頼されることを想像しがちですが、人と人との繋がりはそれだけではありません。
相手の代表システムを知り、ペースを合わせてあげると、自然と人間関係も変わってくると思うので、まずは苦手な患者さんや上司でためしてみてください。
始めはぎこちなくなってしまって、うまくいかないかもしれませんが、会話の中で普通に出来るようになってくると、あなたのコミュニケーション能力は格段と上がっているはずです。